岩本守彦
刀の先は鋭く、厳しい。
一度走っただけでは、何も見ることは出来ないが、
そこには、消すことも、埋めることも出来ない姿が刻まれている。
少し離れたところを、もう一度切って、その間を取り除くと、
初めて、切り口が見え、線が現れる。
時には激しく鋭く、また時には優しく柔らかく、
切り口そのものと、幅を得て生れた線と、二つが一体となって、何かを表現しようとする。
刀は常に、ぎりぎりの姿を求めて彫り込まないと、
一瞬のうちに、取り返しのつかない失敗をしてしまう。
切り口と、線と、面と、そして、それらの調和の美しさを求めて、
私は敢えて〈彫り絵〉とよぶことにした。